
沖縄の妖怪といえば、キジムナーが有名。真っ赤な髪をした子供の妖怪といわれていますが、キジムナー以外でも、沖縄にはいろんな妖怪がいます。目撃例が多い妖怪を、ピックアップしてみました。
人型妖怪
人間の姿をした妖怪には、キジムナー以外にも有名な妖怪がいるようです。
チーノウヤ(乳の親)
チーノウヤは、とってもきれいで優しい女性の妖怪です。おっぱいがとても大きく、洗いざらしのような黒髪を長く垂らしているのが特徴です。
主な出没場所
チーノウヤは、仮墓(童墓/小さな子供が亡くなった時に納める墓)にいるといわれています。
6歳以下の子供が亡くなった時には、チーノウヤに頼めば、乳をのませて育ててくれるといわれているため、妖怪といえども、子供を亡くした親にとっては神様のような存在と考えられているようです。
妖怪となってしまった理由
チーノウヤがなぜ妖怪になってしまったのかは、よくわかっていません。一説には、乳飲み子がいる身でありながらこの世を去ってしまった為に、乳をのませる子どもを探してさまよっているという話もあります。
チーノウヤの特徴
チーノウヤは、本島北部の国頭村や大宜味村では、墓で子育てをしてくれる優しい妖怪として大切にされていますが、同じく北部地区に位置する今帰仁村などでは、子供を奪い去っていく恐ろしい妖怪といわれています。
なんでも、チーノウヤは仮墓だけでなく水の中にも住んでいるようで、幼い子供に鏡を見せると、鏡を水面と勘違いした子どもが水辺に誘われ、そのままチーノウヤに水の中へと引きずり込まれるといいます。
有名なチーノウヤの子育て話
チーノウヤの話で有名なのは、墓の中で子育てをしていたチーノウヤの話。
昔むかし、街の菓子店に、見かけない若い女が赤ん坊を抱いて菓子を買いに来たそうです。女は飴を買って帰りますが、女が去った後には、なぜかウチカビ(あの世のお金)が置かれていたそうです。何度来ても同じことが起こるので、ある日、店の店主が女の後をつけていくと、突然、女は墓の前で姿を消したそうです。
不思議に思っていると、墓の中から赤ん坊の声が聞こえてきます。あわてて、店の店主が墓を開けてみると、そこには、生きている赤ん坊が泣いていました。赤ん坊を連れて帰ってからは、あの不思議な若い女は店を訪れなくなります。
それを聞いた街の人々は、チーノウヤが墓で子供を育てたと噂するようになったのだそうです。
ハーメー・マジムン
ハーメーとは、沖縄の方言で「老婆」のこと。だから、ハーメー・マジムンは、老婆妖怪です。
目撃例は多いのですが、妖怪になってしまった理由や主な出没場所などに定説はなく、目撃者も、「気が付いたらいた!」なんて感じが多いです。
まあ、昔、沖縄でも姥捨て山があったといわれていますから、その頃に捨てられて怨みを持ったオバーが、死んだあとに妖怪になってこの世をさまよっているのかもしれませんね。
火の玉系妖怪
お化け屋敷で必ず登場するのが、火の玉。もちろん、これも妖怪です。沖縄では、たかが火の玉でも、何があって妖怪になったのかによって妖怪の種類が違ってきます。
イネンビ(遺念火)
イネンビは火の妖怪です。もともと沖縄では、亡霊のことを「イネン(遺念)」と呼んでいて、亡霊が火の玉となって現れると「イネンビ」と呼びます。
主な出没場所
イネンビは、山の中や、人気のない寂しい場所で多く出没します。ただ、あちこち移動したり飛び回ったりすることはあまりないようで、毎回、ほぼ同じ場所に現れます。
妖怪になってしまった理由
イネンビの多くは、恋愛関係のもつれが原因で妖怪になってしまったようです。例えば、駆け落ちの末に行き倒れた男女だったり、恋愛のもつれが原因で心中してしまった男女などが、イネンビになるようです。
イネンビの特徴
妖怪になってしまう理由の多くが恋愛関係のもつれによる死亡ですから、イネンビの多くは、2つセットで出没します。目撃者の多くも、2つ揃って出没するところを目撃するようです。
タマガイ
非常に目撃例の多い妖怪です。この妖怪の正体は、火の玉。
生きている人の魂が、体の中から抜け出し、火の玉となってしまうといわれています。
主な出没場所
昔は、夜になると、各集落でよく見かけたといいます。最も多く見られるのは、旧暦の8月8日から11日までの間といわれています。
ちなみにこの期間は、「ヨーカビー」といわれていますが、漢字では「妖怪日」とも書くそうです。
妖怪になってしまった理由
妖怪になってしまった理由はよくわかりませんが、タマガイが上がった家では人が死ぬといわれているため、昔は、魔除けの御願をかけて不幸を祓ったといわれています。
タマガイの特徴
タマガイは、イネンビと違って、うろうろと飛び回るようです。
物系妖怪
沖縄には、「なんでこんなものが妖怪に…?」と思うようなことが、平気でおこります。
ミシゲー・マジムン
ミシゲー・マジムンは、しゃもじの妖怪です。どうして妖怪になったかはわかりませんが、昔から沖縄では、古い食器に妖怪が化けるといわれています。
ミシゲー・マジムンはしゃもじの妖怪ですが、あなたの周りをよく見ていれば、マーカイ(茶碗)の妖怪やコップの妖怪などが出てくるかもしれませんよ。
カムロー
目撃例がほとんどないのに、名前だけは知られている妖怪がカムローです。
カー(井戸)に住んでいる妖怪といわれていて、子供が井戸の中を覗いていると、井戸の奥へ引きずり落してしまうという恐ろしい妖怪です。
カムローは、それ以外にもいたずらをします。たとえば、古い井戸を覗くと、中に潜んでいたカムローが、水面に映る影を奪い取ってしまうため、その子供は病弱になってしまうといいます。
昔は、産湯から生活用水、死後には湯灌(ゆかん)の水としても使われた井戸水ですから、そこにカムローのような不思議な妖怪が住んでいたとしても当然なのかもしれません。
動物系マジムン
妖怪となってしまった理由はそれぞれ違うようですが、股をくぐられると魂を奪われてしまうという点が共通しているのが、動物系マジムンです。
自宅で動物を飼っている人は、よく注意していないと、家族だと思ってかわいがっていたペットに命を奪われてしまうかもしれません。
ウワーグワー・マジムン
豚の顔をしたマジムンです。やはり、沖縄の豚食文化に、当の本人(豚?)たちは怨みを持っているのでしょうか?
ウシ・マジムン
昔、人が亡くなると「ガン」と呼ばれるみこしに入れ、墓地へ運んでいきました。その「ガン」が姿を変えたのが、ウシ・マジムンといわれています。
沖縄では、死んだあと、ウシに生まれ変わる人も相当多かったといいます。先祖の霊と知らずに牛を食べてしまった子孫たちへの恨みが、ウシ・マジムンを生んでしまったのでしょうか?