沖縄には珍しい植物や生き物がたくさんいます。でもこれらの中には農作物に被害を与える「病害虫」もいます。そのため法律で持ち出しが禁止されているものがあります。では沖縄から持ち出せないモノとは?
沖縄から持ち出せないモノその①【紅芋】

沖縄特産の紅芋は、持ち出せない植物の代表でもあります。包丁でカットするとその断面が鮮やかな紫色をしていることから「ムラサキイモ」と呼ばれることもある紅芋ですが、生の紅芋を本州へ持ち帰ることはできません。
ただしこれは「沖縄の特産品だから持ち出させない」というわけではありません。実は紅いもには、本州に生育していない危険な病害虫が寄生している可能性があるため持ち出せないのです。でも加工されている紅いもにはその危険がないため、紅芋を使った菓子類などを銘菓として販売することが出来るのです。
沖縄から持ち出せないモノその②【エンサイ】
沖縄の家庭料理ではよく使われる島野菜の一つが、地元で「ウンチェー」と呼ばれているエンサイです。エンサイは茎の部分が空洞になっていて炒めるとシャキシャキとした食感があるため、地元ではよく使われる葉野菜です。
ところがエンサイは実はサツマイモ属の野菜なので、サツマイモ類に寄生する病害虫が本州に持ち込まれる可能性が考えられることから持ち出しが禁止されています。ただし食べるととてもおいしいので、沖縄に来たらぜひチャンプルー料理として食べてみてくださいね。
沖縄から持ち出せないモノその③【あさがお】
ほとんどの小学校で自然観察のための教材として使われるあさがおですが、実はこれも沖縄から持ち出すことが出来ない植物の一つなのです。
アサガオといっても、沖縄の砂浜などでよく見かけるグンバイヒルガオやノアサガオなどが規制の対象となっています。これらのアサガオには、本州では生息していない病害虫が寄生している可能性があります。そのため持ち出しが禁止されています。ただし禁止されているのはこれらの生茎葉またはその地下部とされているため、種子であれば持ち出すこともできます。
沖縄から持ち出せないモノその④【柑橘系の苗木類】
柑橘系の果物といえば、シークワーサーやタンカンなど沖縄の特産品としても有名なものがたくさんあります。これらの果実や果汁は自由に持ち帰ることが出来るのですが、苗木類は沖縄からの持ち出しが禁止されています。
実は沖縄には、柑橘類を枯れさせてしまう危険な病害虫や病菌がいます。これらの病害虫や病菌の被害を受けると、場合によっては木の根元から枯れてしまうことがあります。そのため柑橘系の果実や果汁は持ち帰ることが出来るのですが、苗木は持ち出しが禁止されています。
沖縄から持ち出せないモノその⑤【アフリカマイマイ】
那覇などの都心部でも時々見かけることがあるアフリカマイマイは、東アフリカが原産の世界最大の巻貝の一種です。見たことがない人はイメージがしづらいかもしれませんが、見た目は「巨大なカタツムリ」です。
とにかくアフリカマイマイは非常に危険な生物とされていて、直接手で触れることも危険です。県内では子供がアフリカマイマイを手で触ってしまったことによって髄膜脳炎を発症し死亡した例も報告されています。持ち出すことはもちろん禁止されていますが、街で見かけたとしても興味本位で触ったりしないようにしてくださいね。
沖縄から持ち出せないモノその⑥【その他の病害虫】
アフリカマイマイのほかにも、こんな病害虫の持ち出しが禁止されています。
アリモドキゾウムシ
一見するとアリのように見えるため、「アリモドキゾウリムシ」と呼ばれています。体は全体的に細長く、アリのように光沢があるのが特徴です。このアリモドキゾウリムシはサツマイモの害虫で、沖縄のような熱帯地域ではよく見られるのですが本州には生息していません。
ちなみにアリモドキゾウリムシの被害を受けたサツマイモは、苦い味がする上にものすごく不快な臭いがします。もちろん食用にはならなくなるので、サツマイモ農家にとっては頭の痛い病害虫の代表です。
イモゾウムシ
アリモドキゾウリムシと同じく本州では生息していないイモゾウムシも、サツマイモ農家の天敵です。沖縄の方言では「イリムシ」「イリムサー」などと呼ばれています。サツマイモ以外にもグンバイヒルガオなどにも寄生しています。
グンバイヒルガオにはアリモドキゾウリムシも寄生しているため、グンバイヒルガオも沖縄からの持ち出しが禁止されています。沖縄の美しいビーチなどでうすい紫がかった可愛らしいピンクの花を咲かせるグンバイヒルガオは、本州でも見ることが出来ます。でも沖縄のグンバイヒルガオには、イモゾウムシ等沖縄にしかいない病害虫が寄生している可能性があるために持ち出せないのです。
サツマイモノメイガ
サツマイモノメイガは蛾の一種です。成虫が農作物に被害を与えることはないのですが、幼虫の段階で農作物に寄生するため沖縄の農家にとっては頭の痛い存在です。名前からもわかるようにサツマイモにも寄生するのですが、それ以外にもエンサイ、グンバイヒルガオ、アサガオなどの茎や葉、さらに地下部に寄生します。
カンキツグリーニング病菌
柑橘類に甚大な被害を与える病気の病原菌のことです。鹿児島県喜界島で平成15~19年にかけて確認された病原菌なのですが、発見された喜界島ではその後徹底した根絶対策が行われたことによって、現在ではカンキツグリーニング病菌の根絶に成功しました。
ただしカンキツグリーニング病菌の被害を受けた柑橘類は数年のうちに根元から枯死してしまうため、本州への被害を防ぐために沖縄本島内で生育された柑橘類の苗木の持ち出しを禁止いています。
ミカンキジラミ
ミカンキジラミは、沖縄県の特産品でもあるシークワーサーやタンカンなど柑橘類の樹液を吸って繁殖をする病害虫です。幼虫は体長がわずか1~2㎜で成長になっても約3㎜の小さな昆虫です。まだら模様があるのが特徴なのですが、わずか3㎜の小さな昆虫なのに2か月以上も生存します。
ちなみにミカンキジラミの被害は樹液を吸われた部分周辺が枯れてしまう程度なのですが、カンキツグリーニング病原を媒介する危険な病害虫とされています。そのためミカンキジラミが規制されている可能性のある柑橘類の苗木は、沖縄からの持ち出しが禁止されています。